《もくじ》 一 クマくん 二 いかだくだり 三 おかあさんはだれ? 四 アナグマやしき 五 モグラのはいく 六 大かぜの日 七 冬のまえに
《一 クマくん》 引っ越しを終えたカエルくんは、窓辺でお茶を飲んでいました。窓の向こうはいちめんレンゲ畑、春の風にゆれています。カエルくんは、ピクニックことを想像しました。 「…はっぱの上にひろげる春のお弁当といったら、だんぜんサンドイッチ。はむしのペーストとレタスのサンドイッチ、マヨネーズたっぷりのポテトサンド、ハチミツ入りのあつあつ紅茶」 「うーん、おいしそう」。 でも、お弁当をいっしょに食べる友だちがいないことに気付きました。 「ともだちがほしいなあ」 カエルくんは、めだまをぐるっと右左に動かしました。 「お弁当、お弁当、ともだち、ともだち」 「そうだ、べんとうやをはじめればいいんだ」 さっそくポスターを作って、あちこちにはることにしました。 【かいてんのおしらせ カエルのべんとうや、かいてんします。 おこのみのべんとう、つくります。 しはらいは、しなものでもけっこうです。 れんげ畑ひがし カエル】 看板もつくってドアの横に立てました。 次の日は雨、その次の日も雨。お客さんはひとりもきません。 そして、さわやかな朝のこと。 ミツバチが「かふんだんご」の注文にきました。子ども食欲がすごいので間に合わないと早口でいいました。 隠し味にはキイチゴのおさけを一滴、小さなレンゲのかふんだんごを作2ってとどけました。お礼にハチミツをもらいました。
どのように偉大な抑制効果の中産階級の家族でしたか? 家に帰ってほっとしていると、郵便屋のハトが手紙を持っていました。 「カエルのべんとうやさんへ ちゅうもん。しょくごのデザートにハチミツが少し欲しいです、 ぶなの森のクマ」 ぶな森には行ったこともなければ、クマくんに会ったこともありません。 カエルくんの胸はドキドキ、ハチミツをもって森に入りました。だんだん気が重くなってきます。もう引き返そうかと思ったとき、がっしりとした丸太小屋が現れました。ドアが少し開いています。 おそるおそる中をのぞきました。 …… 《二 いかだくだり》 日の光が一日ごと明るくきらきらしてきました。木々や草の葉がぐんぐんのびて、濃いみどりになっていきます。 カエルくんはモグラの弁当、ミートボールを、せっせとつくっていました。 「カエルくん、こんなお天気のいい日に、なにをあくせく働いているんだい?」 ふりかえると、チェックのベストに、しゃれたみどりのハンチングをかぶったヒキガエルが立っていました。 「最近、ぼくはいかだくだりにこっていてね」 ヒキガエルはしゃべり続けます。 その間に、カエルくんはモグラのお弁当を完成させました。 「みそとしょうゆのこうばしい焼きおにぎりに、ミートボール、たんぽぽの葉のてんぷらの盛り合わせ、すみれの花の酢の物」 ふたりはつれだって、ひなたが丘のモグラの家に配達にいきました。 ところが、出てきたのはネズミの女の子。モグラのおじいさんのところへ遊びに来ていたのです。 女の子を見たヒキガエルは、急に、 「ね、ね、ちょっと、きみ。川遊びは好き? とんとん川にいかだ遊びにいかない? いかだ遊びって最高だよ」 ヒキガエルの熱心な誘いに、ネズミの女の子はうなづいてしまいました。 「よかった、じゃあ、あした」 ヒキガエルはうれしくってしゃべりまくっています。 そして、明日のお弁当づくりを約束させられてしまいました。 次の日、カエルくんは起きるとすぐ、ふたりのお弁当をつくりました。 「ヒキガエルの好きなはむしのペーストとレタスのサンドイッチ、ネズミの好きそうなくるみ入りチーズとクレソンのサンドイッチ。それからいちご」 ババロアはまだ固まっていないので、後でもっていくことにして、ヒキガエルにお弁当を持たせました。
お昼ごろ、カエルくんは、ババロアを届けにかばの林にやってきました。 ところが、岸辺にふたりの姿はありません。 そのときです。 ヒキガエルとネズミの女の子が乗ったいかだが目の前を流れていきました。そして、いかだは急な流れにすいこまれるように、岩場のほうへ進んでいったのです。 「あーっ、あっ、あっ、あーっ」 ……
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